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その発想はなかったワ…
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これは僕の奇妙にして良く出来た物語のような体験だった。


3年前の冬、僕はとあるカフェで彼女を待っていた。

どこにでもあるようなカフェで、ブレンドコーヒーを一人飲んでいると、
一人のスーツを着たキャリアウーマンのような女性に話しかけられた。

「ここよろしいかしら?」

僕は急いで椅子からカバンを下ろした。
よく見るとかなりの美人だったからだ。

彼女は席に着くとすぐさまこう言った。

「この後何か予定あるの?」


見知らぬ女性に自分の事を尋ねられるのは初めてだった。


なんだろうこの感覚は・・・。


好奇心と警戒心が入り混じった僕は一瞬口をつぐんだが、
彼女との予定があることを思い出した。

「あ、はい。ありますよ。」

なぜだろう。この時彼女という単語を出さなかったのは・・・。

「そう・・・残念ね。じゃあ私の名刺渡しておくわ。おそらくあなたは・・・
そうね、1ヶ月以内に電話してくると思うわ。連絡待ってるね。」

そういって彼女は去っていった。

(なんだったんだろう・・・。)

その去っていく姿を眺めていると、違う明日を失った気がしてきて
いつしか自分を正当化するために必死になっていた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

そして数日後、僕は彼女と別れた。

井の頭公園で一緒にボートに乗ったのが原因だろうか。

それほどかわいくなかったなぁ。でも好きだったなぁ。

未練を断ち切るべく僕は部屋を掃除していた。

もう写真から手紙から想い出なるもの全てを捨ててやろう。

すると1枚の名刺が出てきた。

なんだっけコレ・・・・あっ!!

カフェでの記憶が舞い戻った僕はあわてて日付を見た。

偶然か、あの日から1ヶ月まであと3日だった・・・・。








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あの女性には僕の未来がわかっていたのかな?

記憶の中の彼女は、心の中まで見透かしてしまうような不思議な目をしていた。そして、それがたまらなく魅力的でもあった。

…でも僕は迷った末、電話はかけなかった。

《交通事故で自分の非を認めようとしないオバハンより頑固》

とまで言われた僕だ。素直に彼女の予言通りに行動する気にはなれなかった。

…こんな性格だから彼女とも別れることになったのかもしれない。

そんな時だった



ブルルルルルルルルルルルルル!!!!!



僕のケータイが打ち上げられた鮮魚のごとくビチビチ震えていた。

…いや、ヤンキーの貧乏ゆすりのごとくプルプル震えていた。

…いや、ギャル男のごとくパラパラ踊っていた。


僕は悪い予感がしながらも電話をとった。

彼女…いや、元カノからだった。

『久しぶりね、元気だった?』

彼女の声はどこか元気がないように思えた。

『まぁまぁかな。どうしたの急に?何かあった?』

『うん……実はね……こんなことあなたに話しても迷惑だってわかってるんだけど…実は…あなたの前に付き合ってた人にストーカーみたいなことされてて…昨日なんか手もあげられちゃって……ごめんね?でもこんなこと相談できるのあなたしかいなくって……』

『そう…でも僕には関係ないな。警察にでも相談しなよ。』

僕は電話を切った。その手は震えていた。

僕はまだ彼女のことが好きだった。でも彼女にもう気持ちがないことはよくわかっている。だから電話で話すことさえ辛かった。

そしてストーカーが許せなかった。彼女に手をあげた?ふざけんなコノヤロウ!!

僕はあるところに電話をかけていた。

アニメが大好きだった大学時代の先輩から聞いたスナイパーの番号だ。

ケータイに番号を打つ間、僕は妙な感覚に襲われていた……なんだろう?

意外にも電話に出たのは若い女性の声だった。依頼内容は会って話すことになった。依頼人との信頼関係が大事、そういうことらしい。僕は待ち合わせの時間と場所を指定し、電話を切った。



~翌日~

僕はコーヒーを飲みながら待ち合わせ相手を待っていた。

カランコローン

店に入ってきた女性を見て僕は目を疑った。なぜなら…



『ほらね?だから言ったでしょ、一ヶ月以内に電話してくるって。』



奇しくもそこはあの日と同じカフェだった……








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まさかこんなカタチで再会するとは・・・・。

僕は不思議でならなかった。

「私はイソフラボンあけみ。通称ラボン。ドボンみたいでかわいいでしょ?チームドッグアイのNO.2よ。あなたの名前は?って知ってるわよ。三宅きんみ君。」

「どうして僕の名前まで??ラボンさんは今日の再会まで予言したし。すごい!超能力か何かですか!?」

「きんみちゃん、大人には聞いてはいけないことがあるのよ。これ以上深堀するのなら今回の依頼はナシにするわよ。」

「すいませんでした!ホントに助けて欲しくて電話したんです。」

「OK。それでいいのよ、きんみちゃん。」


もちろんあけみには超能力なんてない。それどころか一般的な能力も欠如しているくらいだ。じゃあ今までの予言は・・・?実はきんみ君の彼女に手を打ってあったのだ。彼女は2万円で協力してくれた。


「で、元カノのストーカーに付きまとわれないようにすればいいんでしょ?」

彼女の見切り発車的な発言も今回ばかりは有効に働く。

「やっぱり依頼内容も知ってるんですね。すごいの一言です!!でも、それじゃ足りないんです。殺して欲しいんですよ。また再発しても嫌なんで。」

「はぁ?わがまま言ってんじゃねえよ!!何で殺さなきゃいけないんだよ。」

あけみの態度は豹変した。なぜなら、再発するたびに金を要求するという芋づる式の金儲けが成り立たなくなってしまうからだ。しかも殺すとなると証拠が必要になってくる。

「あんた義務教育とか受けた?もしかしてゆとり?あ~やだやだ。人殺ス、イケナイ。」

最後の方はなぜかカタコトになっていた。彼女が学生時代に学んだ”いじめ、カッコ悪い。”というフレーズの影響を受けたのだろう。

しかし、きんみ君は納得がいかない。それは彼女が”スナイパー”だからだ。

「だってあなたスナ・・・。」

「しゃ~らっぷ!!」

あけみじゃない。誰かがきんみ君の話を遮ったのだ。




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「しゃ~らっぷ!!」

きんみ君の声を遮ったのはウェイトレスのお姉さんだった。

「他のお客様もおられますので…」

ふとあたりを見回すと僕達は異常な注目を浴びていた。

それがあけみのせいであることは明白だった。今日のあけみは以前のキャリアウーマン風の格好とはうって変わって全身迷彩柄の服を着ていた。

あけみは格好から入るタイプだった。しかし、この大都会(コンクリートジャングル)で何に溶け込むつもりでそれをチョイスしたのかは誰にもわからなかった。ノー・バディ・ノウズだった。

「あの、あけみさ……えっ?」

あけみはもう全然聞いていなかった。さっきのウェイトレスをものすごい睨みつけていた。そうかと思うとあけみは机にあったお店のアンケート用紙に鬼のような形相で書き込み始めた。

僕はあっけにとられていた。しかし先刻から僕に不思議な力を見せていたあけみのことだ、何かあるに違いないと信じてただ見つめていた。

だがきんみ君は知らなかった。このアンケートがとんでもない事件を引き起こすことを…

「それで、依頼のことなんだけど。」

あけみは急に話を戻した。そう、あけみはB型だった。

「狙撃と言っても色々あるわ。要は私がそいつのハートを射止めればいいわけでしょ?」

あけみは彼氏が欲しかった。もちろん当初の目的も忘れてはいない、しばらくしたら別れ、またストーカー行為をするようにしむけるのだ。

「なるほど!完璧ですね!」

きんみ君はあけみのアイディアに共感した。その時だった。

「そうはいかないわよ!」



あけみではない、別の誰かが二人の会話に割り込んできた!









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またさっきのウエイトレスのお姉さんだった。

「何なの?ねぇ何なの??さっきから邪魔しないでよ!!」

あけみは立ち上がり、アンケート用紙に備え付けのボールペンで襲い掛かろうとした。

「ふふっ、あけみもその程度か。私がわからないなんてね。」

「その声・・・まさか!!!」

ウエイトレスは変装道具を全て取った。

「そう、よしえよ。まったくぅ。あなたの任務遂行力はゼロだわね。ずっと見てたわよ。」

「どうして!?あなたに今回の依頼の事は伝えてないはず。。超能力・・・さすが我が師。」


僕はこの光景を見て瞬時に悟った。この世には人間の力を超越した人間が2人もいると。

だが、もちろんよしえにはそんな力はない。ではなぜ、よしえは普通にバイトしていたのだろうか。

実は、あけみときんみ君が店に入る前によしえはこの店に客として来ていた。そして、財布を忘れている事に気づいたよしえは、コーヒー代が払えず、土下座して「体で返しまーす。」と店長に伝えた結果、今に至るのだった。

そして、よしえのスナイパーという職業柄、変装してバイトしていたのだ。

「しょうーがないなぁ。私も手伝ってあげるわ。」

「しょうーがないなぁ。手伝わせてあげるわ。」

「ふぁーはっはっはっはっは。」


二人はシャラポワのショットの時の奇声より大声で笑っていた。

「てんちょー。もうバイトいいっすか~?」

「さっさと辞めてくれよ!」

店長は我慢ならなかった。ものの30分の間にコーヒーカップを5つも割られたのだから。

そしてよしえとあけみはきんみ君と戦略を立てる事にした。。。





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『作戦はこうよ。』

 

よしえが言った。彼女は二人の話をほとんど聞いていなかったため完全に見切り発車だったが、最後にあけみが言った『要は私がそいつのハートを射止めればいいわけでしょ?』というところだけは聞いていた。そして別の意味でやる気になっていた。

 

『あけみ、ターゲットを確認した後、あたしとあんたでどっちが先にそいつのハートを射止めるか勝負よ!どぉ?シンプルでしょ?

 

『おもしろいわ!今日こそドッグアイのナンバーワンがどっちか決めようじゃない!』

 

『あら、師匠のあたしに勝てると思ってるの?勘弁してよもーぅ。』

 

『『ファーッハッハハハハ!!』』

 

二人は林家パー子の『キャハッ!』という奇声より高らかに笑った。

 

きんみくんは完全にほったらかしだったが、彼はもはや二人の信者だったので、まぶしそうに目を細めて二人を見つめていた。そして、とても幸せそうに微笑んでいた。

 

そして3人は動き始めた、目的地はきんみくんの元カノの家だ。ストーカーなら家の近くに潜んでいるだろうと踏んでのことだった。ストーカーの発見にはある程度時間がかかるだろうと皆が思っていた…ある人物を除いて。

 

『あっ!あいつよ!』

 

言ったのはあけみだった。彼女はそう言って元カノの家の近くをウロウロしている「もこみティー」を着た男を指差した。

 

『あ、あけみ…?あなたどうして……はっ、まさか超能力?…さすが我が弟子。』

 

もちろんあけみにもそんな力は無い。マリエと森泉の区別もつかないくらいだ。ではなぜわかったか?元カノからストーカーの情報も聞いていただけである。だがよしえは完全に自分の教えのたまものだと思っていた。

 

『やってくれるわねあけみ。じゃあターゲットも見つかったことだし、ミッチャン・スタートよ!』

 

ミッション・スタートと言いたかったらしい。だがあけみも気づいていないのでおあいこだった。

 

 

 

そして、壮絶なミッションが幕を開けたのだった…





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まず、あけみのミッションでこの師弟対決がスタートした。

よしえときんみ君は電柱の影から見ることになった。

あけみの作戦は”ヤリ手の占い師に扮してお近づきになる”である。
過去に新宿で手相を見てあげると言い寄ってくる外国人に騙された経験があるからだ。

(よしえには悪いけど、この勝負もらったわ)

彼女は”どや顔”でよしえを見、迷彩服の胸ポケットから水晶を取り出した。

(あの娘、いつから小道具を!?)

よしえは初めて自分は実践より指導者向きなのだと思った。

もちろんよしえのおかげでも何でもない。

というか、その水晶は誰が見てもビー玉だった。。。

だが、彼女とよしえはそれが水晶というモノだと信じきっていた。


一方、ストーカーは元カノの自転車のタイヤの空気を入れていた。

ストーカーにもいろいろ存在するらしい。

あけみは迷彩服とビー玉を手にそんなストーカーに近づいた。


「チョットぉ~そこのエアーマ~ン!!」

ストーカーといえば警戒されてしまう。それくらいは心得ていた。


あけみに秘密の儀式を見られたストーカーことエアーマンはパニクり、タイヤを握って、自分が入れた分の空気を必死に元に戻そうとしていた。人はパニックになると自分でもわからない行動に出る。

そんな彼にあけみは

「落ち着きなって。見ようか?見てあげようか?」

とグイグイと彼の顔にビー玉を近づけた。

「・・・何を?」

「見てわからない?あなたの運命よ。いいえ、あなたと私の運命よ。キャッ、まじ恥ずかしいんだけどぉ~」


赤面するあけみを見てストーカーは自分がストーカーであるとバレてない事がわかった。そして、あけみが頭が弱いことも見抜きすぐさま攻めに転じた。

「へ~君と俺の運命?気になるなぁ。っていうかその玉なに?」

「まだ教えてあげないわよ。ちゃんと見ないと分らないからね。これ?この玉は水晶よ。」

「すごいね!!ちょっと見せてよ。水晶って間近で見たことなくてさ。」

「えぇ~どうしようっかな~。この後カフェに付き合ってくれるなら見せてもいいわよ。」

「え?カフェ?俺と一緒に!?ぜひ行こうよ!俺もあなたに興味あるし。」

「チョッ、やだぁ。この子正直すぎなんだけど。どこにする??スタパ?トトール?エクセロ?」

「じゃあトトールで。その前に水晶見せてよ!!」

「欲しがり屋さんだねぇ~!はい、どーぞ。」

彼は玉を受け取った。そして思いっきり遠くに投げてしまった。

「ちょっと!!!!何してんのよ!!!!信じらんない!!!!」

そう言ってあけみは玉の飛んだ方に走っていった。

100円もしない代物だが、あけみにはMOTTAINAIという言葉が染み付いているのだ。

その間、ストーカーはあけみとは別方向に走って逃げた。

こうしてあけみのミッションは終了した。

一部始終を見ていたよしえは怒りをあらわにしていた。

「あけみの水晶をぉぉぉぉ!!この罪は私の恋人になって償ってもらうんだから!!」



翌日、よしえのミッションが始まる。






FC2って何の略?その答えがこのバナーをクリックするとわかるとかわからないとか・・・。

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翌日、よしえのミッションが始まった。

後にスナイパー史では

《エアーマン争奪戦》

と称されるこの伝説の師弟対決(後に映画化)も中盤戦に差し掛かっていた。

行動に移す前によしえは自らの作戦をあけみときんみ君に語った。

「まずエアーマンに極めて自然に近づいていく、そして私が急に倒れるの。ヤツは空気のスペシャリストよ、加えてあたしのこの美貌なら、当然人工呼吸をしてくるはず。そこからお近づきになろうってわけ。もぅー、我ながら完璧だよぅー。」

(なっ!?)

驚いたのはあけみだった。よしえの奇略の才、行動力、自らの体を躊躇なく囮にするスナイパーとしてのプロ意識、どれをとっても一級品だった。よしえにとっては平和な世に生まれてしまったことが逆に不幸とも言えるかもしれない。

(さすがわが師、だけど彼女の才能を見抜いた私の先見の明もたいしたものね。)

あけみは幸せな頭をしていた。

説明を終えると、よしえは二人を電柱の影に残し、昨日と同様に元カノの家の前でウロウロしているエアーマンの元へ向かった。

エアーマンは元カノの家の鍵穴から空気を吹き込んでいた。どうやら元カノが自分に振り向かないので二酸化炭素で窒息させようと思ったらしい。

「チョットぉ~そこのドアーマ~ン!!」

エアーマンと呼べばあけみとつながりがあることがバレてしまう、それくらいは心得ていた。

昨日の今日で多少慣れていたエアーマンは、「プッ」とお尻からエアーが出る程度の動揺で済んだ。

「き、君は?」

「あたし?見てわからない?あたしはドアの精よ!」

エアーマンは目の前のキャッツアイの格好をした女の言っていることがわからなかった。

「もーぅ、あなた全然鍵穴への空気の入れ方がなってないわよ!ちょっ、あたしがやって見せるからホラ見てなって、ホラ!」

そう言うとよしえはエアーマンを押しのけ、地球の空気を独り占めするかの如く大きく息を吸い、地球から全ての社会問題を吹き飛ばしかねない勢いで鍵穴に空気を吐き出した。

「ホラあんたもやってみなさい、ホラ!…あ、ダメ、酸欠。」

そういうとよしえはエアーマンの目の前で倒れた。

(ミステリアスで美しく、か弱い女…条件はそろったわ、これで後はヤツ自ら唇を重ねてくるのを待つだけね。)

よしえは勝利を確信していた。むしろ「キスなんて何年ぶりかしら?」などと別のことを考えていた。


だがエアーマンはそのスキに逃げてしまっていた。

一部始終を見ていたあけみは思った。

(ウソでしょ!?あの流れでキスしない人がいるの!?…エアーマン、ヤツを放っておいたら世界が終わるかもしれない…。)

するときんみ君が久しぶりに口を開いた。

「あけみさん、俺にいい考えがあります!」

「うるっさいわね!素人は黙ってなさいよ!チョッ、この子まじウザイんですけどぉ~。」


だが、今まで目立たなかったきんみ君のこのアイディアがこの戦いに終止符を打つことになるのだった。







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最近はそんな声が聞こえてくるとかこないとか…。
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