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その発想はなかったワ…
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拙者は訝しく思いながらもその手紙を開いた。


「   わたしのゆめ


わたしのゆめは、あおいねこのロボットにまけないくらいにんきもののロボットをつくることです

みんなからあいをいっぱいもらえるようなロボットをつくりたいです


あらい もえ       」


それは荒井ちゃんが幼い頃に描いた未来だった。

「待つっす荒井ちゃん!」

どんな言葉を掛けようと思ったかはわからない、ただ荒井ちゃんを呼びとめようと思った。しかしそこにはもう荒井ちゃんの姿は無かった。ものもらいでふさがった左目は、涙を流すことさえ許さなかった。

荒井ちゃんを追いかけようとドアノブに手を掛けた瞬間、違和感に気づいた。ノブに何か掛けてあるのだ。…それは眼帯だった。荒井ちゃんに貰った最後の愛だ。

拙者はこの愛を心の胃袋で反芻し、ある決意をするのだった。


~数ヵ月後~


超満員の観衆の中、左目に「貰」と書かれた眼帯をした一体のウシがステージに立っていた。

「最後の曲っす。聞いてほしいっす。」

……………………………………………………………

拙者はモラえもん。

あいつが耳をかじられたなら拙者は角。

そう思うだろ?

NO FICTION!

拙者は犬にかじられた。

セリフ「それでもあいつら愛くるしい」

……………………………………………………………

荒井ちゃんが姿を消した後、拙者はロックバンド「モラえもんず feat.マチャピン」を結成し、CDをリリースした。忘れていた何かを思い出させるような歌詞に人々は共感を覚え、さらに眼帯が「コワエロイ」とワイルドなセクシーさを醸し出す効果を発揮し、拙者の人気は爆発した。

「拙者、荒井ちゃんが目指したロボットになれたっすかねー?」

ライヴを終えた拙者は独り楽屋でそう呟いていた。

すると誰かが楽屋のドアを開けた。

「お前の親孝行、ちゃんと見せてモラったよ。」

その人物とは…





……………………………………………………………

私はテレビの電源を切った。

そして、プレイヤーから今話題の「モラえもん」のDVDを取り出し、ケースにしまった。

アニメにしか興味の無い、職場の男たちの気持ちが少しだけわかったような気がした。

「生きる希望をモラったわ。」

そう言いながら私は二つ目の顔に変身し、夜の世界へと繰り出すのだった。









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