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その発想はなかったワ…
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『とりあえずご飯にしましょ?せっかくの“卵の姿焼き ファイナルエディション”が冷めちゃうよ?』

僕は彼女の料理が大好きだった。たとえただの目玉焼きを卵の姿焼きと表現してしまう天然な女の子でも大好きだったのだ。今日で彼女の料理を食べられるのも最後か……。そう思うと胸にアツいものがこみ上げてくるのを感じた。

『そうだね、食べようか。うひょう!おいしそう!』

『ふふっ、まーくんたら子供みたい。』

 

最後の晩餐は少しだけ涙の味がした。

 

食事が終わると彼女は唐突に話を切り出した。

『ねぇ、まーくん。この粉少し舐めてみてもいいかしら?私、前から少し興味があったの。売りさばく前にちょっとだけ。ね、いいでしょ?』

舐められてしまえばただの小麦粉だということがすぐにバレてしまう。僕は激しく動揺した。

『バカ!何言ってんだよ!お前コレが何かわかってんのか!?』

 

『………わかってるわよ?』

 

彼女はそう言ってニヤリと笑った。それは先ほど見せた悪意に満ちた顔だった。

その瞬間僕は全てを理解した。そう、彼女は本当に全部“わかって”いたのだ。彼女が遊戯王カードで磨いていた戦略を組み立てる力は、僕の想像を遥かに上回っていた。僕は血の気が引いていくのを感じた。

『ふふっ、マサハル!あんたの考えてることなんて全部お見通しよ!あんたがさっき何も考えずに食べた卵の姿焼きの中には………』

 

マサハルの運命やいかに……!!

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俺は高校三年生。将来を左右する大学受験を控えている。世の中は学歴社会じゃなくなったっていうけど、どうも違うみたいだ。なら偏差値上位の大学にいくしかない。

そんな嘘でかためられた世界を常に客観的に眺められるんだ。その辺の”最近のワカモノ”と一緒にしないでくれよ。俺は同世代の奴らより優れているんだ。

もちろん成績も優秀だ。周りを見渡すとホント馬鹿ばっかりに思えてしょうがない。この学校は俺とそれ以外の人に分かれているみたいだ。悔しかったら勉強して俺を越えてみろよ。

 

ただ...........一人、クラスの中に気になる女性がいる。

彼女の名前は「全 日本」。全さんは中国人だ。

彼女は俺の数倍頭が良い。だって中国語ばりばり喋れるんだぜ?

こんな胸が苦しい気持ちは初めてだ。じゃあ告白しろって?俺は受験生だって言っただろ。心を恋愛感情で埋め尽くしているわけにはいかないんだよ。

でも俺は東京の大学、彼女は京都の大学・・・・・今年で離れ離れになってしまう。

どうしようか・・・。

全さんに新しい彼氏を見つけてやれば縁が切れる!

そう思った彼は、急いで中国人で日本語が話せる男を探し始めた。

・・・・しかし、なかなか見つからない。

そうして3週間が経った。

『人生ってうまくいかねーもんだな・・・・。』

彼は心の底からため息をつき、生まれて初めて自分が弱い生き物だという事に気づいた。

そして、だんだんと切ない気持ちがこみ上げてきた。いつしか彼は半生を振り返っていた。

(俺はなんて馬鹿だったんだ・・・・。一人の女を手に入れるために一人の女を殺すなんてどうかしてるよ。しかもそこまで苦労して手に入れた女をただ言葉が通じないだけで捨てようとしている。人間ってなんだよ!俺ってなんだよ!ちくしょう・・・・ちくしょう・・・・)

彼は全さんの前で泣いていた。

そして、力を振り絞って言葉を発した。

『ご....めん..な。俺.......間違っ....てた.....』

全さんに日本語は通じないことは百も承知だ。でも、どうしても一言言っておきたかったのだろう。

しかしその時、

『あんまり自分を責めないで。』

全さんが喋った!!!!

 

俺の名前はポ・ソンポン。韓流スターだ。

“ニキビ顔の堕天使”なんて愛称で呼ばれて、日本のマダムはみんな俺に夢中さ。

といっても韓国では俺の知名度はゼロだ。

なぜかって?

だって俺、ホントは日本人だからな。本名は保木 損平だ。

……おっと!こいつは内緒だぜ?

韓流という付加価値が無ければ、俺なんてただの加齢臭漂ううさんくさい親父だからな。

…いやホント2年前からすごいのよ加齢臭が。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

『ソンポンさーん!』

いつものようにマネージャーのゲロ山 (あだ名)が仕事をもってきた。

…ふぅ、人気者は大変だな。

そう思いながらも彼は現場へ向かった。

しかし彼はまだ気づいていなかった。

この仕事が彼のスター人生を大きく変えることに……

『チョット待テ!!』

ソンポンのその激しい口調にドMのマダムは身悶えした。

だがソンポンは必死だった。

マダムが突然ソンポンに火をつけようとしたからだ。炎の大脱出でもやらせようというのだろうか。体に直接火をつけられたら脱出どころではなく死ぬだろう。

だがマダムは注意されたことで逆にテンションが上がっていた。

再びソンポンに向かって火を放とうとしてきたのだ。

『待てって言ってんだろうがこのドヒマダムが!!』

…しまった!?

さすがのマダムも突然の流暢な日本語に唖然としていた。

やべぇ!バレ……ハッ!!??

その時ソンポンは気づいた。

 

そのマダムは幼稚園のときに転校してしまった初恋の女の子だったのだ。

 

(や、やよいちゃん?そんな……)

ソンポンは動揺していた。

同時にひとつの選択を迫られていた。

 

1・スター人生を守るためにこの場はうまくごまかす。

2・スター人生を放棄して告白する。

 

『よし…』

ソンポンはそうつぶやきひとつの決断をしたのだった…

私の名前は、カリフラワーよしえ。職業はスナイパー。

本名だと勘違いしないでね。スナイパーは素性を明かさないものでしょ?これはコードネームってやつよ。

みんなには「カリフラ」って呼ばれてる。カリスマみたいで私は気に入ってるの。

スナイパーになって3年目。

最近よく聞くじゃない?3年以内に会社を辞める若者が多いって。

私も辞めたい・・・・。だって依頼がなかなか来ないんだもん。

全然イメージと違ったわ。

・・・・・・・・

シャワーを浴び終えて、タバコを吸おうとした時、彼女の携帯電話が仕事の依頼を運んできた。

「もしもし、こちら×××の者だが・・・。ぜひ君にやってもらいたい仕事がある。」

「何かしら?」

その仕事の内容は・・・・・

『君はホントに変わった人だ。そんな人じゃないとスナイパーなんてなれないのかもね。』

(なんだこのエロ親父は・・・・お前に私の何がわかるっていうの?)

『で、用件は何?ミッ○ーちゃんをどうとかって聞こえたけど?』

『あぁそうだ。ミッ○ー・マウスを暗殺して欲しい。って言っても中身の方だぜ。』

(こいつ何言ってるの・・・・?ミッ○ー・・・・中身・・・・暗殺・・・・)

彼女は夢の世界の住人だった。だからこの依頼の意味が全くわからない。中身ってなんだよ。しかし、ここで聞き返してはこの依頼がパーになる。そのことは彼女の経験が教えてくれていた。

『そう・・・ま、楽勝なんじゃないかな。でも何で??あんなにかわいいミッ○ーちゃんをどうして?』

『中身の奴がうざいんだ。俺の狙ってる女に手を出すんだよ。だから邪魔でさ。』

『はぁ?何言ってんのお前!さっきから中身中身って。ぜんっっぜん意味わかんない。バカなんじゃないの?ミッ○ー・マウスってのはねぇ、恋人がミ○ー・マウスで、愛犬がプ○ートで@#$$#%%&』

『もういい!お前なんかに頼んだのがバカだったよ。じゃあな。』

ブチッ。電話が切れた。

まじ意味わかんない。あんな奴ディ○ニーランドと間違えて上○動物園に行ってしまえばいいのよ。

社会を知らないって恐いわね。

それにしてもミ○ーが欲しくてミッ○ーを殺すの?あんな奴に国民のアイドルが振り向くわけないじゃない。

勘違い男って恐いわね。あ~やだやだ。

そして再びタバコに火をつけた。

 

彼女はスナイパーよしえ。

いまだ人を殺したことがない。

 

『どうしたのS美?何かあった?』

親友のT子が心配そうに尋ねてくる。

さすがに5年目の付き合いともなると顔を見ただけでわかるらしい。

…いや、私が嘘が苦手なだけかもしれない。

とにかく隠し事はできなかった。

『実は昨日ね…』

そう言って私はカバンからあるものを取り出した。

『なっ!?S美、それって!?』

驚きと恐怖と諦めの入り混じった声で叫ぶT子。

当然の反応だろう、なぜならカバンから取り出したそれは…

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